SAVE THE CATの法則では、メインである15に分解された構成論だけでなく、良い作品とはどういったものなのか、アンチパターンは何かなど、物語を形にする上で必要な理論がまとめられています。
脚本術と本のタイトルにあるものの、物語を作って売り出すすべての人に役に立つ名著だと思います。
今回はその「SAVE THE CATの法則」について、物語全般の話に書き換えつつ、特に重要だと感じた部分をまとめていきます。
※私個人の解釈や例も含むため、本書の本質を全て再現しているものではありません。
本記事は私が重要に感じた部分をまとめるものであり、独自の解釈も入っているため、実際に本を読んでいただくことでより理解が深まります。
Chapter1 どんな映画なの?
「どんな映画(作品)なの?」という質問に、簡潔に上手く答えることができるかどうかが大切です。
もしこの質問に対して、独創性を持った上で簡潔にすばやく、一言で答えることができれば、相手は関心を持ち、さらにはストーリー自体も良いものになっているものであると言われています。
本書では、作品を表す一言のことを「ログライン」と表現しており、最高のログラインを作ることの重要性が語られています。
ログラインには「皮肉(予測不可能な事態)」が必要である。
例えとして、アニメのなろう系作品などがわかりやすいと個人的には思っていて、「転生したらスライムになっていた」「転生したら剣だった」など、予測不可能な事態を表すものがあります。
ドラマを例にすると、花より団子のように「裕福な生徒の多い学園に貧乏な主人公が入学する」などです。
ストーリーを象徴するような言葉を含み、作品の全体像が見えるような「ログライン」を作ることで、ストーリー自体も良くなり、作品の惹き部分を表すことができます。
Chapter2 同じものだけど…ちがった奴をくれ!
有名な監督たちは、映画を語るときに何百本という作品から様々な引用をする。
自分の作品は、どんな作品に似ているものなのかを理解することで、全体の仕組みが伝わりやすくなります。
何にも似ていない作品なんておそらくなくて、どんな作品も何かの作品に似ているものになると思います。
独自性は、その似ている作品からひねりを加えたものにより作られると思います。
シーンの中でパクリのように見えるものがあれば、そこから少しひねりを加えてみましょう。
本書では、10のジャンルが説明されているため、自分が作る作品はどのジャンルに当てはまるのか興味があれば読んでみてください。
Chapter3 ストーリーの主人公は
ストーリーの主人公は、ログラインを明確にする役割を持ちます。
基本的にはストーリーが先で、主人公はそれに合わせて作ることが多いとのことです。
主人公が冒険をする目的は、複雑にする必要はなくて、多くの人が共感するような単純な目的にすることで、読み手がストーリーに入り込みやすくなります。
主人公は、「設定された状況の中で一番葛藤する」「感情が変化するのに一番時間がかかる」「楽しんでもらえる客層の幅が一番広い」ことを要素として持つと良いです。
本書で言われている「楽しんでもらえる客層の幅が一番広い」については、多くの人に売りに出す上で重要なポイントなだけであり、ターゲット層によるものだと思うため、必須ではないと思います。
ただし、自分が40代だから40代の主人公など、安易な設定はあまり良くないです。
★Chapter4 さあ、分解だ!
ここがメインの部分、物語の構成についての話です。
三幕構成という言葉がありますが、それだと区切りが大きすぎてどう書けばいいか迷ってしまうため、15のビートに区切った「ブレイク・スナイダー・ビート・シート(BS2)」が提示されています。
※()内の数字は全体を110ページ(おそらく脚本のページ数)としたときに何ページ目に当たるか
- STEP1オープニング(1)
どういう映画なのかが想像できるシーンです。
成長前の主人公の出発地点を示します。 - STEP2テーマの提示(5)
テーマ(論点や主張)を提示します。
例)「復讐は正しいか正しくないか」「こんな人生に賛成するか反対するか」 - STEP3セットアップ(1~10)
読み手が関心を持つか持たないかの境目となる部分
この段階で、全ての登場人物が登場、もしくは存在がほのめかされます。
登場人物の特徴や後に起こる問題の原因となる行動が表現されます。
主人公が最後に勝つためにはどのように変化すべきかがわかる部分です。
⇒主人公に欠けている部分がある場合はそれを見せる。 - STEP4きっかけ(12)
セットアップで提示した使用前の世界をぶち壊します。
例)「恋人に振られる」「解雇の知らせ」「余命宣告」 - STEP5悩みのとき(12~25)
主人公は、自分の目標が実現不可能なんじゃないかと疑問を抱いて悩みます。
現状維持でも良いのではないかと悲観的になります。
⇒旅の大変さを示して、主人公が悩むシーン
悩みの中で何かしらの疑問を抱く部分
⇒本当に実現可能なのか?これを解消して第二幕へ - STEP6第一ターニング・ポイント(25)
一幕と二幕の境目であり、主人公の変化が見える部分
脚本を受け取ったときに最初に見るページとのことです。
使用前の世界を出て、正反対の世界に進む瞬間
主人公が明確な意志を持って第二幕へ進みます。 - STEP7サブプロット(30)
世界の変化の衝撃を和らげながら、さらにストーリーを前進させます。
ちょっとした場面転換の部分
新たな視点から捉えたメインプロットとも言えます。 - STEP8お楽しみ(30~55)
宣伝や売りとしているシーンを見せて、何のために作品を見ているのかを理解してもらう部分
例)「不思議な力を試す」「相手を出し抜く最初のシーン」 - STEP9ミッド・ポイント(55)
主人公が絶好調or絶不調になります。
お楽しみは終わって、危険度が急激に上がるシーンです。
見せかけの勝利になっている場合、この時点では素晴らしく見えるだけであり、根本的には上手くいっていないものとします。 - STEP10迫り来る悪い奴ら(55~75)
主人公の見せかけの勝利の裏で、悪者たちは体勢を立て直して総攻撃をしようと決意します。
主人公は見せかけの勝利のあと、仲間との意見の食い違いや疑い・嫉妬などで、結束力が弱まる
例)「勝利にうぬぼれる」「自分の手柄を主張する」 - STEP11すべてを失って(75)
主人公は絶不調になります。
ストーリーで言うと最悪の状況は一時的なものとはいえ、主人公の人生が絶望で終わったように見えます。
さらに、このあたりで登場人物の誰かが死ぬことが多いです。
死ななくても自殺をしようとするとかもあります。 - STEP12心の暗闇(75~85)
死の瞬間を経験したor身近に起きた主人公はどう感じているのか?
夜明け前の闇の部分であり、主人公は深く考えて心の奥底を探ります。
アイデアは生まれる気配すらなく、自分がちっぽけな存在であると知って絶望します。
徹底的に打ちのめされてはじめて、人間は解決法を見出すため、その過程を表します。
このビートは、5秒で終わるときもあれば、5分続く時もあるらしいです。 - STEP13第二ターニング・ポイント(85)
解決策が見つかって、あとは実行するのみの状態になります。
メインプロットとサブプロットが出会う地点でもあります。 - STEP14フィナーレ(85~110)
第三幕、全てのまとめです。
第一幕と第二幕で経験したことを基に、主人公が新たな道を切り開き、悪い奴らを一掃します。
⇒新しい秩序を作るためには、悪い奴らは一掃されなければならない。
主人公が勝利しただけでは十分でなくて、新しい世界が生まれるところまで描く。
本当に良かったと満足が行くように、主人公だけの成長にとどまらず、世界を変えなければならない。 - STEP15ファイナル・イメージ(110)
「オープニング・イメージ」と対のビートです。
本当の変化が起きたことを見せる部分
このビートが書けないときは、第二幕の積み上げが足りていないとのことです。
⇒もう一度ストーリーの方程式を見直すべき
Chapter5 完璧なボードを作る
「アイデアのまとめ方/出し方の手法」のような話が書かれています。
物語や作品に直接かかわる部分ではなかったため、私は流し見程度しかしておりません。
興味があれば、実際に本書をお読みください。
Chapter6 脚本を動かす黄金のルール
このChapterでは、物語の決まりごとが書かれています。
- 主人公が悪いことをする場合でも、正当化して共感を生む
例)主人公は殺人を行うものの、対象としているのは犯罪者や悪者たちである。 - 過去の事象などの退屈に感じてしまいがちな説明は、背景の映像で注意を逸らしつつ入れ込む
例)メインではない戦闘シーンや動きのあるシーンを流しつつ、説明を入れる。 - 一つの作品で魔法は一度だけ
⇒二つのあり得ない事象を受け入れさせるのは無理がある
例)エイリアンが侵攻してくる+神が存在する - 要素が多すぎると話が入ってこない(パイプの置きすぎ)
⇒説明に時間がとられ過ぎたり、理解するのに時間がかかるものだと、話が入ってこない
例)パルスのファルシのルシが、コクーンを侵食してい - スピード感のあるシーンで、長時間の思考は現実味がない
⇒戦闘シーンで思考時間が長かったりすると、スピード感が失われる - 主人公やその仲間など、悪役以外のキャラは変化(成長)すべき
- マスコミは立ち入り禁止
例)エイリアンをかくまっていたら現実的にはマスコミが押し寄せるが、それだとストーリーが成り立たなくなる
Chapter7 この映画のどこがまずいのか?
このChapterでは、物語におけるアンチパターンや見直すべきポイントが書かれています。
- 主人公は流されるのではなく、自分で思考して答えを出して、自発的に行動する
- キャラクターは背景を説明する都合の良いものではなく、自然に話すべきである
⇒セリフでプロットを語らせないようにする。
どうしても語る必要がある場合は、文字ではなく映像を上手く使って簡潔に語る
かつ、直接的に説明せずとも、それが感じ取れるシーンを描く
これはよくやりがちなものだと思うので要注意です。 - 悪い奴はひたすら悪く描く
⇒主人公が悪い場合、悪役はもっと悪く描くことで、共感を生むことができます。 - 物語は直線的に常に順調に進んでは面白くない
⇒ジェットコースターのように展開の激しい変化を繰り返して前に進むものです。
日常系だとこの限りではないかもしれません。 - 「やあ、元気?」「うん、元気だよ」のような無駄な会話は惰性で入れない
⇒これは個人的に大切にしているもので、意味のある会話以外は入れないことを心がけています。
これも日常系だと深くは意識しなくて良いかもしれません。 - 難解で伝わらないものは極力避ける
⇒誰でもわかるような物語を作った方が良いです。
Chapter3でも語られていた主人公の目的の部分でもあったように、目的は単純であり主要な部分は複雑化させない方が良いと思いました。
Chapter8 最後のフェードイン
「完成した作品を持ち込んで実際に売るときの売り方」みたいな話が書かれています。
本書が海外の方が書かれた本であり、売りに出す部分は日本と異なる部分がありそうだと感じたため、私は流し見程度しかしておりません。
興味があれば、実際に本書をお読みください。
物語や文章構成について、他にも知りたいorもっと深く知りたい方向け
参考書
SAVE THE CATの法則
今回まとめた本です。
シナリオ構成や全体の作りについては、この本1冊読んでおけばとりあえずは大丈夫と言えるほどの名著です。
今回の記事で興味を持った方は、一度読んでみることを強くおすすめします。
SAVE THE CATで売れる小説を書く
SAVE THE CATの法則を小説を書くことに当てはめた本です。
SAVE THE CATの法則にて説明されていた15分割したビートシートを、10ジャンルに対して当てはめて分析しています。
SAVE THE CATの法則をより深く理解するために良く、具体例を見つつイメージを深めたい方におすすめです。
初心者でも完成させる 個人でのノベルゲーム制作の流れ
私が書いた本ですが、ノベルゲーム制作の流れについて書いてあります。
シナリオの部分に特に力を入れていて、シナリオを実際に書く時のライティングルールやプロットの作り方など、実際にゲーム制作時に使用した資料を入れつつ説明しております。
シナリオ特化本ではありませんが、ノベルゲーム制作をする方にはおすすめです。
動画教材
Udemy
一生役に立つ物語の法則をマスター!|物語で感情を動かすストーリーライティングコース本書とは異なり、物語の構成を12ステップに分割した物語の王道パターンである「神話の法則」について学べる動画教材です。
SAVE THE CATの法則で書かれているビートシートで十分だと思いますが、別の考え方もあるんだという視野を広げる上で、一度学習してみるのも良いと思います。
ちなみに、Udemyはセールを頻繁にやっているので、割引されているときに購入することを強くおすすめします。
※画像のように約90%オフとか普通にあります。
動画教材で学習する時間を取りたくない方は、以下記事にて説明していますのでこちらをご参照ください。
最後に
今回は「SAVE THE CATの法則」について紹介しましたが、いかがだったでしょうか?
ノベルゲームにおけるシナリオライティングや私がノベルゲーム制作した話など、以下記事にまとめてありますので、興味があればこちらもご覧ください。
記事に対する感想や記事のリクエストについては、お問い合わせからいただけると幸いです。